HIPHOPうんちくん

おもに米HIPHOPの新譜やアーティストのうんちくなどについてつらつらと執筆するブログです。

映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」と"Bye Felicia!"

こんにちは。

先日、やっとこさ劇場に「ストレイト・アウタ・コンプトン」(以下「SOC」)を鑑賞しに行って参りました。一度、試写会で拝見しており、その時点で作品の壮大さにだいぶ震えたのですが、もう一度大きいスクリーン&音響で観返すと新たな発見があったり、前回とは違う箇所で震えたり…。ちなみに渋谷のシネクイントさんに観に行ったのですが、ロビーには「SOC」を扱った国内媒体の切り抜きコピーがわんさか掲示されていました。中には私の拙稿もあり、嬉しいやら恥ずかしいやらって感じでした。

各ラッパーのレコーディング・シーンとか、実際もこんな感じだったわけぇ?とかなり勘ぐってしまうところもありますが、映画の中のストーリーと史実はこんなに違う!というような指摘はすでにさんざんweb上で議論されてますので、お暇な方は検索してチェックしてみてください。

 

以下、ネタバレを含みますので気をつけてお読み下さいましね。

私が「お!」っと思った箇所なんですが、N.W.Aを離れたアイス・キューブが自宅で脚本を書いているシーンがあるんですね。そして奥さんに字幕上で「脚本はどう?」と聞かれる(すみません、字幕うろ覚えです)。これ、英語のセリフでは「How's Friday Going?」(これもうろ覚え、ごめんなさい)と聞いていたんですね。Fridayって、金曜日のコトだけど、ここでのFridayは違います。キューブの代表作ともいえる映画「Friday」を指すのですね。もっというと、「Friday」はこの「SOC」の監督であるF・ゲイリー・グレイ氏の映画監督デビュー作でもあるんです。私は勉強不足で全然知らなかったのですが、「Friday」にはてアイス・キューブが(役者としてだけではなく)脚本家としても参加していたのですね。IMDbをチェックしたらライターのところはキューブのクレジットでした。

www.imdb.com

そして、「Friday」といえば有名なのがこの"Daaaaaamn!"のシーン。

www.youtube.com

 

「SOC」でもエンドクレジットの際にフィーチャーされていましたね。嬉しかったです。そして、「 SOC」と「Friday」を巡るとっておきの小ネタが。

それが"Bye Felicia"です。

どうでもイイ女=フェリーシャに向かって吐く別れ文句みたいなモノで、とっととその場を去ってほしいヤツに向けて「バイ、フェリーシャ」と言うんですね。これは、「Friday」のアイス・キューブのセリフから派生したスラングなの。

www.youtube.com

"Bye Felicia"は一度2014年に急上昇したスラングでもあるんですが、理由を知りたい方はこちらでどうぞ(英語)。

ネット上のミーム(meme。いまだにどんな日本語が適切なのか分かりません)もたくさんあるので、暇な方はこっちも検索してみてください。

さて、「SOC」をご覧になった方、どこでこの"Bye Felicia"が使われていたかお分かりですか?

答えは、N.W.Aのメンバーがグルーピーと一緒にホテルの部屋でギャングバングしているシーン。フェリーシャの彼氏が銃を携行して彼女を探しにくるけど、あいにくフェリーシャはイージー・Eとお楽しみ中。でも、イージーも後に引けず立派なガンを片手に彼氏の元へと向かいます。「フェリーシャは取り込み中だからとっとと失せな!(←婉曲な表現。字幕はもっと過激だから安心して!)」と彼氏を追い払い、そのあとに半裸のフェリーシャを部屋のドアの外に追いやります。

そこで、「Bye, Felicia!」と。

興奮!!実際、アメリカの映画館ではココですごく盛り上がったみたいなんだけど、どうだったんでしょう!?

しかも、このフェリーシャ・ネタはもとの台本にはなく、アイス・キューブ役を演じたキューブの実子であるオシェア・ジャクソンがグレイ監督に提案したものらしいです。かつて父親が使ってブレイクした伝説的なネタを自ら20年後に再び劇中で使用するなんてめちゃくちゃアツいよね。"Bye Felicia"を「SOC」内にフィーチャーした経緯について、アイス・キューブとグレイ監督自身が実際に語っておりますので、物好きな方は併せてどうぞ。

www.yahoo.com

 

いやー、本当に何回観ても楽しみドコロがたくさんある作品でした。2月からは立川シネマシティさんで極上音響上映もスタートするそうなので、そちらも観に行ってみたいです。

cinemacity.co.jp

ちなみにグレイ監督は、アイス・キューブのこのMVなどを撮った方。

www.youtube.com

そして、次の作品として「ワイルド・スピード8」の監督にも抜擢されています。ですので、リュダクリスとタイリースによるブラック・ムーヴィーへのオマージュ・シーンとか、グレイ監督ならではのヒップホップ要素溢れるニヤリ・シーンがあればいいな〜と今から楽しみ。

そういえば、2パックの自伝映画も、つい最近また監督が変わってMV出身のベニー・ブームが起用されていましたね。

確かに好きなMV作品は多いけど、彼がメガホンを取るかと思うと少し不安だ…。

ではみなさま、まだ劇場に足を運んでいない方はぜひ「SOC」観てみてね。

Bye Felicia!

カニエ・ウエスト新曲"FACTS"を発表

<2016年1月2日 追記アリ・修正アリ>

 

こんにちわ。

元旦。目が覚めたらカニエ・ウエストが新曲"FACTS"を発表していました。

びっくりして色々ツイートをしていたのですが、すでにこんなに書くネタがあるならブログにまとめておこう…と思って、こうしてしたためている次第です。

まず、カニエと元日といえば、2015年の元日にも新曲"Only One"をサプライズ・リリースしていたカニエ。

 

youtu.be

あのポール・マッカートニーとコラボしたことはもちろん、愛娘であるノース・ウエストちゃんをフィーチャーした歌詞とMVも話題になりました(MV監督はスパイク・ジョーンズ)。

 

そして、そんなカニエが2016年1月1日に発表した新曲"FACTS"。

soundcloud.com

何ということでしょう!トラックもフロウも、ドレイク&フューチャーの"Jumpman"にそっくりです!

www.youtube.com

本家"Jumpman"では「Jumpman, Jumpman,Jumpman…」とヴァースの冒頭で繰り返していますが、カニエは「Yeezy,Yeezy,Yeezy」と。

ここで説明しておきますが、Jumpmanとはバスケ選手、マイケル・ジョーダンのこと。そして、ドレイクはNIKEのジョーダン・モデル(ぞくに言う、Air Jordanですね)とパートナーシップ契約を結んでいるんですね。一方、Yeezyはカニエが立ち上げたスニーカーならびにアパレル・ラインの名前です(もともとはカニエ自身のニックネームだったんだけど)。これもまた逸話があって、もともと初代Yeezy(読み:イージー)はNIKE傘下のプロジェクトとして発売されていたんですね。NIKE Air Yeezyシリーズを必死こいてゲットしていたヘッズの皆さん、少なくないと思います。そして、カニエはあのルイ・ヴィトンなどともコラボ・スニーカーを発売しておりますが、ここでは割愛。NIKE Air Yeezyシリーズは数モデル出てますし、都度かなり話題にもなり、カニエとNIKEはいわば蜜月関係にあるように見えたんですね。

ところが、2013年、カニエはNIKEとの契約を破棄し、adidasと契約を結ぶと発表しました。理由は単純で、結局カネの問題だそうです。

 

だので、この"FACTS"でもNIKEへのディスが満載。

「ドレイクやドン・C(カニエのマネージャーであり、おしゃれアドバイザーでもある)がいないと何の価値もない」

「俺が自分のアイデアを話すと、"アグレッシヴすぎ”と否定する」

「俺は数年間もトレンドセッターだけど、お前らの話題が続くのはせいぜい2、3日だろ」

「あいつらはまるで従業員を奴隷のように扱うのさ」

レブロンには逃げられないように10億円の契約金を払うくせに」

などなど。

フックの歌詞も

「YeezyはJumpmanを飛び越したぜ!(Yeezy just jumped over Jumpman)」

と強気。

※このラインは2012年に発表した『Cruel Summer』内の"New God Flow"にてすでにお披露目済み

genius.com

ですので、Air Jordanのロゴに似せたようにも見えるジャケットのポーズといいトラック選び(ちなみにプロデューサーは"Jumpman"とおなじメトロ・ブーミン。そして、サウスサイドのタッグによるもの)といい、今回の"FACTS"はカニエの純正新曲とはちょっと言い難いかな〜というのが私個人の見解です。

 

ちなみに、私の大好きな娘ちゃん、ノース(ニックネームはノリちゃん)に関するラインも。

「10 thousand dollar fur for Nori, I just copped it

Your baby daddy won't even take your daughter shoppin'」

(10,000ドルのファーコートをノリに買ってやったばっかり。

お前の子供の父親は、娘を買い物にすら連れて行く余裕すら無えだろ)

ノリのファーコートといえば、この曲を思い出します。

Travis Scott Ft. Future & 2 Chainz - 3500 (For The Coat )(CDQ) - YouTube

これはもともと、カニエの奥方であるキム・カーダシアンがノリちゃんに3500ドルのファーコートを買ったというエピソードがきっかけで作られた楽曲だそう。

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余談ですが、"FACTS"にもバスケ選手の名前が2名出ていて、誰かっつうとジェイムス・ハーデン、そしてスワッギー・Pことニック・ヤング(イギー・アゼリアの彼氏。まだ付き合ってるよね?)。2名とも、adidasと契約を結んでいるバスケ選手です。もっと余談だけど、ジェイムス・ハーデンはキム奥方の妹である、クロエ・カーダシアンの彼氏。もっと余談だけど、クロエの元彼は、先日、クラックのやりすぎで生死の境をさまよった元レイカーズの選手、ラマー・オドムです。

※私、当初ニック・ヤングのGFをアゼリア・バンクスと書いてしまっておりました…。失礼しました!ずーみんさん、ご指摘ありがとうございます。よりによって犬猿の仲の二人を間違えてしまった…。

 

という感じで、カニエ・ウエスト"FACTS"をブレイクダウンしてみました。

これからドレイクがどう出るのかが楽しみです。

もしくはNIKEから提訴されちゃうのか…。

 

ここに、"FACTS"に関して私が呟いたツイートをいくつか貼っておきます。

カニエの新曲はNIKEと契約しているドレイクの"Jumpman"を使って、俺はadidasと組んで成功した=俺はジャンプマン(マイケル・ジョーダン)を越えたと自慢してるだけの曲(ある意味アンサーソング)だから『SWISH』と結びつけるのはちょっと違うかなと思う><

shiho watanabe (@shihoe) 2016, 1月 1

 

カニエのお年玉ソングはNIKEへの痛烈ディス&Kimoji APPが分速100万ドル売上&同郷のDJ Timbuck2追悼、などなど。ビル・コズビーのネタも織り込んでるから本当に録ったばっかりなのかな。元ネタはJumpman。 https://t.co/ldn2kdV8es

shiho watanabe (@shihoe) 2016, 1月 1

 

NIKEはDon Cがいなけりゃ何も出来ねえ、アディダスみたいにファンにタダでスニーカーをばら撒くことも出来ねえ、従業員を奴隷のように扱いやがるし、レブロンに10億円払ってしがみついてる、アディダスはYeezy Seasonに必要な100万ドルを払ってくれた、と。 #Facts

shiho watanabe (@shihoe) 2016, 1月 1

 

【問】"Jumpman"でのドレイク&フューチャー、そして"Facts"のカニエ・ウエスト、三者のヴァースに唯一共通して出てくる人気者の名前は? 【答】DJマスタード

shiho watanabe (@shihoe) 2016, 1月 1

 

"FACTS"の歌詞全文はこちらでご参照ください。

genius.com

 

また面白いネタが見つかったら何かしたためますね。

では!