HIPHOPうんちくん

おもに米HIPHOPの新譜やアーティストのうんちくなどについてつらつらと執筆するブログです。

アリ・シャヒード・ムハマドさんのありがたいメッセージ

こんにちわ、ブログではお久しぶりです。

「ルーク・ケイジ」というNetflixドラマをご存知ですか?すでに日本語で書かれたいろいろな記事が出回っておりますので、ご存知ない方はぜひ調べてみてください。ちなみに、主人公のルークはよくフーディー(フード)を被っているのですが、「フードを被った黒人男性=怖い、というイメージが、ルーク・ケイジのおかげでかっこいいイメージに払拭された」と語る男性の小話がネット上で話題になっていました。

で、そんな「ルーク・ケイジ」のスコアを手掛けているのは、ア・トライブ・コールド・クエストのメンバーとしても知られるアリ・シャヒード・ムハマド氏と、あのDJプレミアもその手腕をベタ誉めしている新鋭音楽家、エイドリアン・ヤングです。WOOFIN' 誌(Vol.248 / 11月号)の企画で、「ルーク〜」に絡んだアリ・シャヒードさんのインタヴューを取らせて頂く好機に恵まれたのですが、その際に伺った「若者へのメッセージを」という問いに対するアリさんのお答えにグッときたので、ここでその答えの全文をシェアしたいと思います(誌面には、字数の関係で一部カットした文章が掲載されています)。

http://cdn3.pitchfork.com/news/64795/7e5b5307.jpeg

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(WOOFIN'は若い読者も多くて、10代や20代のファンにもメッセージを頂けますか?という問いに答えて)

この世代はとても特別な年代なんだ。人生で最も充実している時期だよ。色んなところにアクセスできるし、個性を伸ばすこともできる。学校に行って、ホワイトカラーの職に就いて定年退職して…あ、その前に子供ができるかもな…でもそればかりが楽しい人生ってワケじゃない。ちゃんと自分の内側を見て、やりたいことを見極めてくれ。若者ってのは常に周りのヤツらとは違う存在でいようとするものだし、たくさんのパワーがある。そしてネットワーク力も。それはテクノロジーやスマートフォンが辿り着ける場所じゃない。だから、自分が今、生きている時間を大切にして欲しい。愛情と情熱を捧げて、自分の内側にあるものに没頭して欲しい。誰かに嫌な思いをさせられることがあるかもしれないけれど、自分の人生を花開かせるように一生懸命突き進んで欲しい。素晴らしい時間を過ごせると思う。

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昨今はSNSが発達して、私もよく「自分が若い時にSNSが氾濫していなくてよかった…」と思うことがしばしばあります。もしも学生の頃にLINEやTwitterがあったら、絶対に振り回されていたと思う。SNS等で嫌な思いをしている若者がいたら「あなたの価値や人生は、テクノロジーやスマートフォンが辿り着けない場所にある」とアドバイス差し上げたいくらいです(老婆心ですね、完全に)。

アリさんのインタヴューが掲載されたWOOFIN' 誌(Vol.248 / 11月号)は、明日くらいには店頭から無くなってしまうと思うので、もしも興味のある方は店頭に急ぐか、amazonなどでポチっと入手することをオススメします。表紙はジェイデン・スミスくん。私もいろんなアーティストにインタヴューをさせて頂いておりますが、ここまで育ちの良さをオーラにまとったセレブリティはジェイデンが初めてです。っていうか、私が日ごろインタヴューさせて頂くアーティストは、ゲトーな雰囲気の方が多いから余計にクラってしまいました…。

あと、アリさんに「ATCQの新作が噂されてますけど?」と最後に聞いたら、「またそれかよ…」みたいなヴァイブスで「伝説はシールドしたままの状態の方がいい時もあると思う」とのことでした。

 

 では、また何かあればブログにしたためますね。

ごきげんよう。

「アメリカのラップも聴いた方がいいですか?」という質問。

こんにちわ。昨今、ちまたでは<日本語ラップ>が盛り上がっていますね!

というわけで、最新の「サイゾー」誌には「増加する【ビッチ】ソングの是非」というテーマでコメントを(初めて取材していただく側に…照)、そして「ユリイカ」誌には「USラップシーンのトレンドの変容と日本語ラップ 」というテーマで寄稿させて頂きました。どちらも、お話を頂いた時には「私でいいのかな…」と思ったのですが、お声掛け頂き、とても光栄に思っております。

今日もラジオで喋ったんですが、「日本語ラップ!」と言われると、「英語のラップもあるよ!」と言いたくなってしまうのが私の性分でして…。

私、インターネットラジオ局・blocl.fmで「INSIDE OUT」という主に最新のHIPHOP情報をお届けする番組のホストMCをさせて頂いておりまして、今年でなんと5年目に突入します。もともとはラッパーのAKLOくんも一緒にホストを務めており、彼も番組に在籍していた時は「USの最新HIPHOPR&B情報」をお届けすることにこだわっていて。というのも、今って海外の音楽ブログやサイト、音楽ストリーミング・サイトなどで日々発信される情報、発表される新曲はめちゃくちゃ多い割に、それを日本語で伝えるメディアって本当に無いんですよね。総合的な音楽サイトや個人のブログなどはあれど、海外のHIPHOPを割と専門的に扱っているメディアってほぼ皆無に等しいのでは無いでしょうか…。なので、リスナーが能動的に必死でしがみついていかないと、USを初めとする海外のHIPHOP情報にキャッチアップすることって結構ハードルが高いんですよね〜。しかも、英語という言語のハードルもあるし…。そんなわけで、USの、ってところに重点を置いていたわけなんです。今も、いろんな国内のラッパーやDJの方をゲストにお迎えしているけど、リアルタイムにUSのシーン、アツい新曲も積極的に紹介しているつもりです。

今、日本のドメスティックなHIPHOPシーンが成熟期を迎えていることもあって、ラップの楽曲が聴きたいと思ったら、日本だけの楽曲だけでも全然事足りちゃうんですよね。「HIPHOPは好きだけど、日本語ラップしか聴きません!英語のラップは分からないので聴きません!」と言われることもあったりして、もちろん、それはそれで喜ばしいことなんだけど、常にUSのラップ作品を追いかけてきた身としては一抹の寂しさも覚えちゃう…っていう。

USと日本って、HIPHOPシーンの産業規模が全然違っていて、道端でコカイン売ってたゴロツキの男性があれよあれよと言う間にラップで成功して、幾つか企業もM&Aなんかしちゃって、今では億万長者…ってことが本当にあり得るんですよね。地方の田舎者ラッパーみたいな扱いだったのに、今じゃ何本も人気映画作品に出演していたりとか。N.W.AのDr.ドレーなんて、今やアップルの役員ですからね…。なので、発表される作品もお金の掛け方や、新人ラッパーの契約金の額面も段違いだったりして、そうした点も端から見ていてとてもエキサイティングに感じてしまうんですよね。

で、当たり前だけどシーンの規模がデカいから、リスナーもラッパーも、その他関係者も、その母数がめちゃくちゃデカい。なので、日々発表される楽曲の数もめちゃくちゃ多い。その分、進化のスピードもハンパないし、次々と新しいトレンドが生まれる。

なので、HIPHOPシーンの「お手本」としてUSのシーンを追いかけることも、リスニング・ライフを楽しくする一つのポイントになるのではと思っています。たまに「アメリカのラップも聴いた方がいいですかね?」と聞かれるることがあるんですが、「聴いた方がいいですよ!」と返しています。

私はこういったサイトをよく見ています。英語だけど、見出しだけ読めばだいたい中身は予想がつくようになっていると思います。「XXXというラッパーのYYYという新曲が出たのか…」みたいな。

先日、ある方から「日本語ラップのMCたちが、USの最新ラップ曲を追いかけることに必然性はありますか?」と聞かれることがあったんですね。端的に言うと、私は「(必然性は)ある」と思います。そうすると、「日本のHIPHOPって、結局アメリカの黒人の真似だろ?」とたびたび言われることがあるんですよね。不思議ですが、私は以下のように考えていて。

例えば、イタリア料理に魅せられた日本人がいるとしますよね。日本のとある町の近所のピザがめっちゃ美味しくて、俺もこのピザを作れるようになりたいな、と思って、そのレストランで腕を磨く。でも、本場のイタリアの味も知りたいと思うようになり、実際にイタリアで修行して、それをベースに、日本でさらに切磋琢磨していく。同時に、本場ではピザを作る技術にどんな変化が生まれているのか?イタリアのピザ屋ではお客さんにはどんなモノが求められているのか?なんてことを常に気にするマインドも自然と生まれていくと思うんですよね。そんな彼のピザを「どうせイタリア人の真似だろ?」と揶揄する人はいるのかしら?寿司に魅せられたアメリカ人とか、相撲に魅せられたモンゴル人でも、なんでもいいんですけど。

もちろん、USで発達してきたHIPHOPシーンは奴隷制をルーツとした、アメリカ黒人の皆さんが抱える問題が色濃く反映されて来ていることも事実。抑圧された環境の中で「言いたいこと」があるから、みんな、それをライムにしてきた。HIPHOPのライブでもよく見かける「コール&レスポンス」というお客さんとの対峙の方法がありますが、あれも、もともとは奴隷制時代における黒人たちの労働歌が下敷きになっているとも言われていて、それがゴスペルに発展していったという側面があります。あと、畑を所有している主人に歌の内容が分からないよう、聖書の内容をいろんな比喩を使って歌詞に落とし込み、それを労働歌として歌っていた…とかね。これも、今のHIPHOPのリリックの要素と似ているよね。

ラップをきっかけにHIPHOPに興味を持った方がいれば、こうした背景も探ってみると面白いし、知っておくだけで全然違うと思います。その上で、その文化にリスペクトがあればいいんじゃないかな、と。

危ない危ない、どんどん話が脇道に逸れていってしまいました。その他、HIPHOPパブリック・エネミーとかKRSワンとかの関係性は、気になる方は調べてみてください。あと、「ユリイカ」をどうぞ。私は特に、いとうせいこう氏が「鎖国はするな!」と仰っているのに感銘を受けたし、漢氏の「ラップはもはやヒップホップじゃなくて技術」というお言葉にもハッとしました。今、流行っている「ラップ」って、きっと表現方法の一つの手法としてのラップなんだよね。HIPHOPの文脈ではなくて。

そんなこんなで、じゃあ結局、USのHIPHOPシーンってどうなっとんの?という方は、「WOOFIN'」最新号を読んで見て下さい。

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表紙はアトランタのスター・ラップ・トリオのMIGOS(ミゴス)です!すごいよ!

あとはINSIDE OUTもよろしくね!

ではでは〜。

 

 

 

アトランタの思い出。

みなさま、ごきげんよう。最初から分かっていたことではありますが、ブログの更新がめっきり滞ってしまいました。不甲斐ないです。

すでに色んなところで書いたり喋ったりしているんですが、先日、ゴールデンウィーク時期にアトランタまで旅行に行って参りました。3月には上海に、4月には出張でフランスに行っていたので、次の海外はどうしてもアメリカ大陸に行きたかったの。海外に行くことが決まると、いつもチェックするサイト。それはSongkick。ココとticketmasterなどをチェックして、滞在期間中にめぼしいライブがないかどうか確認するんです。同時に「そういえば、ビヨンセがツアー日程を発表していたはず!」と思い、スケジュールをチェックしたら、なんと5月1日にアトランタ公演があるではありませんか!これは何かの思し召し、と思って、アトランタ行きを決行した次第なんです。アトランタに行くのは人生二度目。一度目は、大学生のとき。当時はアトランタに知り合いなんぞもいるわけもなく、しかも、米国では未成年扱いだったのでクラブに行くなんてとんでもない!って感じだったんですね。おとなしく、キング牧師の生家や資料館を観て廻るに留まったのを覚えています。でも、そのときにレノックス・モールでデビュー直後のヤング・ジーズィーと遭遇したの。今でもハッキリ覚えています。あと、そこらへんの電柱にマイク・ジョーンズのデビュー・アルバムのポスターがべたべたと貼ってあった。マイク・ジョーンズならびに彼の所属レーベルであったSwisha Houseはヒューストンを拠点としているのですが、こうしたトピックからも、当時のテキサス・シーンの勢力のデカさが伺えるかもしれません(どうかな?)。

ちなみにこのころ。

さて、アトランタ滞在中は、現地に住む日本人フォトグラファーのアキさん

Aki 安希 (@YOJPGIRLAKI) | Twitter

に非常にお世話になりました。クラブに連れて行ってもらうのも、現地のアーティストの元を訪ねるのも、すべてアキさんのコーディネートによるもの。めちゃくちゃ感謝してます。アキさんから伺う話も、本当に一つ一つ貴重なモノばかりで、ずっと興奮しっぱなしでした。

いい話だな〜と思ったのは、NYのアーティストって、成功するとみんなニュージャージーやマイアミ、LAなんかに引っ越しちゃうけど、アトランタのアーティストは、ずっとアトランタに住み続けることが多いみたい。あんなに成功しているヴェテランのアウトキャストの二人も、ずっとアトランタ住まいだそうです。MIGOSは豪邸を建てて住んでいるらしいし、ディアンジェロのバック・シンガーとしても来日したジョイ・ギリアム(グッディ・モブのメンバー、ビッグ・ギップの元奥さん、かつ元ルーシー・パール)も、アトランタに住んでいるっぽい。ディアンジェロと仕事をしているくらいだから、てっきりハリウッドあたりに住んでいるかと思ってた!

でもって、アトランタのクラブやバー、ストリートなどを訪れて感じたことは、とにかくアトランタ産のヒップホップ・チューンしか掛からないこと!もちろん例外はチラホラあるけど、8割強が地元の楽曲って感じでした。NYともLAとも違う、ローカル・シーンのアツさをめちゃくちゃ感じた。もともとアトランタ産ヒップホップは大好物だったけど、さらに虜になりました。

そんなわけで、たった3泊の滞在だったけど、アトランタで聴いて印象的だったバウンシー・チューンを紹介します。

 

Future ”Wicked"

とにもかくにも、フューチャーはよく聴いた!この曲はストリップ・クラブで掛かってたのが位印象的。この間、INSIDE OUTのスタジオにDJイナフ氏が来た時も、DJ LEADさんがこの曲を掛けたら私に「アトランタのストリップ・クラブを思い出すんじゃない?」と話しかけてくれたほど。フックの「wicked(イカれてる)」が「wiggle(プリプリ揺らす)」に聴こえるからかな?

Future "Thought It Was A Drought"

こちらもフューチャーですね。昨年のアルバム『DS2』から。この曲からは、「グッチのサンダルを履いた女」ってラインがややバズったのですが、クラブでもみんなそこのラインを合唱していた!この曲、大好きなんですが東京のクラブでは聴いたことがなかったのでめちゃくちゃ嬉しかったです。

Bankroll Fresh "Trap"

北部のクラブに行った時、サイドMCがバンクロール・フレッシュ(彼は3月4日、アトランタ市内のスタジオ付近にて銃に撃たれ死亡。現場には50発もの薬莢が落ちていたとか…)への追悼シャウトをカマしていたのも印象的でした…。R.I.P…。

 

YFN LUCCI "YFN"

注目の若手、YFN ルッチも地元からの人気が高そうな感じでした!ストリップ・クラブで隣にいた男の子に「この曲、誰の曲か知ってる?YFNだぜ!」と言われたから、「YFN ルッチでしょ!知ってるよ!」とact like you knowスティーズで返してしまった。

Quality Controlチューン、いろいろ

でもって、あとは地元の新鋭レーベル、Quality Control(QC)の勢いが凄かった!もちろん、みんな、QCの事は知ってるし、クラブでもホンマによう掛かってたし、アトランタの地元シーンはQCが牽引しているというイメージでした。アキさんのお陰で私もQCのスタジオに行かせてもらったんですが、入り口も厳重でめっちゃ豪華なスタジオ。MIGOSもOGマコもココでレコーディングしてるのか〜と思うと震えました。ここのレーベルからは、ホセ・グアポ、リッチ・ザ・キッド、ジョニー・シンコなどなど注目株がたくさんいるので、皆さんもチェックしてみて。ジョニー・シンコと話した時に、調子に乗って「QCは日本でも大人気だから、ぜひみんなでツアーしに来て!」と言ってしまったけど、みんなクリミナル・レコード(逮捕歴)もバッチリついてるだろうし、入国は難しそうだよね(笑)。

O.T. Genasis "Cut It"

いやはや、日本でも流行ってると思うけど、これもよく聴いた。ビヨンセまで、ツアーのセットリストに入れ込んでいたのにはびっくり。O.T.ジェナシスってアトランタ生れ、ロングビーチ育ちってことになってるけど、アトランタにいたのはいつ頃なんだろ?

"Cut It" と”Panda"で踊るビヨンセ

Fat Joe, Remy Ma "All The Way Up ft. French Montana, Infared"

アトランタ産チューンで印象に残っているのはコレくらい。

あと、北部のクラブでシャイ・グリージーの曲が掛かっていて(何だったか思い出せない…)、それも盛り上がっていたな〜。

ここには書けないことも諸々あって、本当に素晴らしい滞在でした。地元のHPHOPラジオから流れてくる音も、ことごとくエキサイティングだった。アキさんの車に乗せてもらう以外は、たいていUBERを使っていたんだけど、彼らの車の中でもほぼ100%、地元のHIPHOPラジオが流れていて、マジで四六時中大好きなトラップ・ビートに包まれている生活で最高でした(3日間だけだったけど)。UBER、唯一の例外は帰国する前日の夜中に最後に乗ったライドで、黒人のマダムが運転手だった。掛かっていたのはスムースJAZZのラジオ。「うちの家族はみんな楽器を弾くんだけど、アトランタにはいいジャズ・クラブが無くてね〜」と言っていた。ちなみに、私の滞在中、スナーキー・パピーもアトランタ公演をやっていて、無理をしてでも観にいっておけばよかったな〜と後悔しているところ。

こないだ、ピーウィー・ロングウェイやホセ・グアポらと仕事をしたフランス人DJと話してたんだけど、やはり彼らがスタジオで醸し出すヴァイブスは本気すぎてヤバい、と、みんな、ドラッグを捌いてハスリングするか、ラップして稼ぐかしか方法が無いから、と。スタジオに来て、まずみんなポケットからテーブルの上にガンを出して制作にとりかかるんだって。まあ、日本じゃ関係ないかもしれ無いけど、やはり彼らのそうしたバックグラウンドが染み付いているのがアトランタHIPHOPなんだなあ…と。あと、ストリップクラブのカルチャーね(これについては今度、どこかで喋りたいです><)。

私、早くも、またアトランタに行きたいと思っています。若者たちは、どんどん海外旅行に行った方がいいよ〜。円高のうちに、ぜひ!

そして、コレ以外のアトランタの諸々は次号の『Woofin'』でも書かせてもらっていますので、またお知らせしますね!

最後は、アラサー世代にはたまら無いアトランタ・アンセムでお別れです。

では、また。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【イベント開催】#BANGBANG4

こんばんわいに~!

ようやく春めいて参りましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか。

2016年に入って解説した当ブログ、予想した通りすっかり更新が滞ってしまいました…。よくないですね。3月は一度も更新することがないまま通り過ぎて行ってしまいました。4月は頑張ります。

さて、新たな年度を迎え、新生活をスタートされた方も多いのではないでしょうか。私も、かれこれ13年前の4月に地元の広島から大学進学のために上京してきたことを思い出しました。9年前の4月、あか抜けないスーツを着て入社式に出、曲りなりにも社会人生活をスタートしたこともまた、まざまざと思い出されます。

そんなドキドキのイベント・シーズンである4月に、HIPHOPイベントを開催する運びとなりました!

概要はこちら。

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#BANGBANG4

2016年4月8日(金)@代官山SALOON

OPEN 23:00

3,000yen (w/1D)

facebookのeventページで、各出演者の方のMIX作品など紹介しております!

DJs:
DJ HAZIME

GUNHEAD

DJ YABLOVE

KM

ShioriyBradshaw

DJ RE-JI

Y2FUNX(with Live Performance)

LIVE:

SMITH-CN

IO(KANDYTOWN/BCDMG)

CHEF:

きじまりゅうた

Hosted By #BlackRiverMobb

ホストを務めるのは、私・渡辺と、スタイリストの黒川慎太郎氏です。彼と一緒にイベント「#BANGBANG」をスタートしたのが2012年2月(4年前!)。毎回、出演者の方や開催場所を変えながら、このたび4度目の「#BANGBANG」を開催する運びとなりました。ありがたいことですね…。今回も悩みに悩んだ末の極上のラインナップでお届けします。是非とも今、皆さんに聴いて頂きたいDJの方やMCの方々に声を掛けさせて頂きました。都内の小箱で行われるSMITH-CNさんのライブはなかなかレアですし、先日、UNITでのワンマン・ライブも大盛況だったIO君のパフォーマンスを至近距離で観るチャンスです。DJタイムも豪華です。

前回に引き続き、シェフとして参加して下さるのはNHK Eテレきょうの料理」、そしてNHK総合でスタートしたばかりの記念すべき冠番組(!)「きじまりゅうたの小腹がすきました!」でもおナジミの、私が敬愛する料理研究家・きじまりゅうた先生!いくつもレシピ本を出版されているきじま先生のお料理が頂けるHIPHOPイベントは #BANGBANG4 だけ!

あと、4月1日放送のblock.fm「INSIDE OUT」内で大々的に #BANGBANG4 の紹介をしております。放送のアーカイブ音源が聴けますので、是非是非チェックしてみて下さいまし!

INSIDE OUT by 渡辺志保, Yanatake - 2016/04/04 | block.fm

「この春から東京に引っ越してきたはいいけど、まだどこのイベントにも遊びに行っていないな~」という方や「兼ねてからHIPHOPのイベントに足を運びたいのはヤマヤマだが、どこのパーティーに行くべきか…」という方もお待ちしております。私、当日は、【UGK】というアルファベット3文字が書いてあるTシャツを着ていると思うので、いらした際は是非お声掛けください。お酒の1杯でも一緒に頂ければと思います。

では皆様、今週金曜の夜は代官山で一緒に遊びましょう!

代官山SALOONにてお待ちしております!

カニエ・ウエスト「Real Friends」対訳

アルバム『The Life Of Pablo』の発売に先駆けて発表されていた「Real Friends」、アルバムを通して聴くと「めちゃええ曲やんけ…」と惚れ直したので訳しました。

オリジナルの英語歌詞はコチラで。

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ヴァース1:カニエ・ウエスト

リアルな友達、何人いる?

俺たちの中でリアルな友達呼べるのは?

ジェラってくるヤツらはどれくらい?

リアル・フレンズ

そんなに多くないさ、お互い笑顔でいられるヤツっていうのは

正直でいられるのは?これは信頼問題だ

ウザいから電話番号を変えたのさ

もしもお前が良からぬ事を考えていても、責めはしないぜ

俺には問題なんて無い、自分のやり方を貫いているだけ

お前も自分なりに頑張ってるならいいんだけど

俺は金策に困っていて、家族の集まりが大嫌い

聖餐会でも泥酔して、教会をめちゃくちゃにしちまった

タダで配ってるワインを撒き散らして、おかげでタキシードが汚れちまった

地元の街には1日しか居られないのさ、

一体、何をやってんだ?

お前のリアルな友達は誰だ?

俺たちはみんな、どん底から這い上がってきた

俺はいつだってお前を責める

でも何が悲しいかって、お前は取るに足らない存在だってこと

チクショウ、彼女に電話するのを忘れちまった

木曜日だと勘違いしてたぜ

そもそも、何でお前は俺に電話するのに1週間も掛かってるんだよ

あいつの誕生日を最後に祝ったのはいつだったっけ?

こんなに急がず、最後にゆっくり出来たのはいつだったっけ?

 

ブリッジ:タイ・ダラー・サイン

バスケのシーズン中、チケットが欲しかったら俺に言ってくれよ

お前の娘にフェイスタイムで電話を掛けるときも俺に言ってくれよ

俺たちが若かった頃でさえ、ちゃんと時間を作ってたよな

今じゃ忙しすぎてなかなか時間割けない俺たち

俺の…

 

フック:カニエ・ウエスト&タイ・ダラー・サイン

リアルな友達のためにさえも

俺、自分にふさわしいものはゲトったはずだよな?

(ストリートの噂話だって、実際に彼から聞いたモノじゃない)

俺、自分にふさわしいものはゲトったはずだよな?

(俺の名前を使って、あいつの悪口を言ってるんだ)

 

ヴァース2:カニエ・ウエスト&タイ・ダラー・サイン

俺はお前の娘の年齢さえ知らなかった

お前の息子の年齢さえ言い当てられなかった

俺にも息子が産まれるっていうのによ

俺にはすでに一人、娘がいるっていうのに

自分の家族のことすらあまり話さずに

ウマいモノがあると姿を見せていただけ

15分もあれば、お前の妹と写真だって撮れる

メリー・クリスマスと伝えて、それでおしまい、すぐに仕事に戻るのさ

本気の話が聞きたいって?

俺がまだプレッシャーに耐えられると思ってるんだろ

あの請求書の話は止めてくれよ

誰だって抱えてる問題さ、子供たちは関係ない

お前は俺の友達だろ?

あいつらは俺をクレイジーだと思ってるんだ

お前は俺を守ってくれた

おかしな話だけど、俺は何世紀も仲間と話していないのさ

正直に言うと、俺はお前のエネルギーを感じないんだ

金はお前の親族さえも敵に変えてしまう

あいつらが取り繕っているほど、実際はリアルじゃない

 

ヴァース2:カニエ・ウエスト&タイ・ダラー・サイン

リアルな友達を探しているんだ

俺たちの中でどれくらい?

リアルな友達と呼べるのは

リアルな友達に向けて、リールが巻き終わるまで

タイヤが外れ落ちてしまうまで、タイヤが回らなくなってしまうまで

午前三時に電話を掛ける

リアルな友達は何人いる?

何気ないことを聞いたり

何気なく気持ちを察するような友達は

何人いる?

「お前、調子どう?元気にしてるといいんだけど」なんてメールしてくるヤツが大嫌いなんだ

「元気にしてるよ、最高だぜ」なんて返すと、次の返事では何か頼みごとしてくるから

何人いる?

お前の家族にとってベストなものって何?

近くても、遠くても

どんな口論でも、メディアが囃し立てるのさ

イトコが俺のPCを盗みやがった

ハメ撮り映像も入っていたラップトップ

俺はそいつに250,000ドル払って取り戻したんだぜ

リアルな友達

 

フック:カニエ・ウエスト&タイ・ダラー・サイン

リアルな友達のためにさえも

俺、自分にふさわしいものはゲトったはずだよな?

(ストリートの噂話だって、実際に彼から聞いたモノじゃない)

俺、自分にふさわしいものはゲトったはずだよな?

(俺の名前を使って、あいつの悪口を言ってるんだ)

カニエ・ウエスト「I LOVE KANYE」対訳

DJプレミアがリミックスしたことでも話題の「I LOVE KANYE」。アルバム『The Life Of Pablo』収録曲の中でも群を抜いてキュートな一曲なので訳しました。

ちなみに原曲はアカペラです。

オリジナルの英語歌詞はコチラでどうぞ。

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昔のカニエが懐かしい、ゴー(※シカゴ、もしくはコモンのコレ)から出てきたばかりの頃のカニエ

ソウル楽曲をサンプリングしていた頃のカニエ、目標に向かって頑張っていた頃のカニエ

新しいカニエは嫌い、バッドな雰囲気のカニエ

いつだって乱暴なカニエ、ニュースを賑わせているカニエ

スウィートだった頃のカニエが懐かしい、ヒップホップ・ビートをバシバシ作ってた頃のカニエ

あの頃はカニエに会って見たいと思ってた

カニエを発掘したのはこの俺さ

カニエなんて全然いなかったんだぜ

でも今じゃ周りを見回すとカニエだらけ

昔はカニエを愛してた、昔はカニエを愛してた

ピンクのポロシャツまで買って、まるで自分がカニエだと思ってた

もしもカニエがカニエについての曲を書いたらどうなる?

「昔のカニエが懐かしい」って曲

やべえ、それって超カニエじゃね?

全てはカニエだったのさ、俺たちはまだカニエを愛してる

そして君のことも愛してる

カニエがカニエを愛しているのと同じくらいにね

ビヨンセ"Formation"、それぞれに提示するステイトメント。

<2016年2月9日 追記・加筆修正アリ> 

※今回の記事において、ビヨンセの歌詞中に「negro」と表記されている箇所はそのまま「ニグロ」と訳しています。現代社会において、我々がこの「Nワード」を使うことはタブー以外の何物でもありませんので、ご承知の上お読みください。

 

ビヨンセが米時間の2月6日にいきなりドロップした新曲”Formation”、このブログを読んでくださっている紳士淑女の皆さまにおかれましては、すでにチェック済みの事だろうと思います。

「やっぱりビヨンセはクイーンだ!」と納得させられる、パワーとエネルギーに満ちたMVは素晴らしいの一言。

そしてこの"Formation"、それぞれの拠りどころとなる深い楽曲なんです。

まずは女性として。

ピッチフォーク曰く「ビ・ロソフィー(Bey-losophy、哲学=フィロソフィー/philosophy)」とのことですが、ビヨンセはいつだって、歌を通してフェミニズムにも通じるビヨ哲学を私たちに説いてくれていました。「アンタ、おかしいんじゃないの!?おカネも長所も何一つ無い男のくせに!」と男性バッシングをかます”Bills,Bills,Bills”や「服も靴も家も、私の稼ぎで買ってるの、だって私が頼れるのは自分だけ」と歌う”Indepenent Woman (pt.II)”、そして「問:世界を仕切ってんのは!?答:ガールズ!」と歌う霊長類最大規模のガールズ・アンセム”Run The World (Girls)”などなど、凹んだ時、仕事や学校に行きたく無い時、こんなダメな男と別れたい…と悩むとき、いつだって背中を押してくれたのはクイーン、ビヨンセです。

そんなビヨンセが、今回も「さあ、レイディース!フォーメーションを組むよ!」と宣戦布告。ビヨンセにそう言われちゃうと、自然にエンジンがかかってしまいます!

「Y'all haters corny with that illuminati mess(またへイターたちがダサいイルミナティ論とか語っちゃってるわけ?)」

「I'm so reckless when I rock my Givenchy dress(ジバンシィのドレスを着た私の戦闘力のヤバさ、分かってんの?)」

「I dream it, I work hard I grind 'til I own it(私は理想を夢見て、働き続けてきた、一生懸命だったのよ、理想の生活を手に入れるまで)」

「Drop him off at the mall, let him buy some J's, let him shop up(彼をモールに連れて行って、いくつもエア・ジョーダンを買わせてあげるの、店ごと買い占めるのよ)」

「Always stay gracious, best revenge is your paper(いつだって広い心でいるの、最大のリベンジは稼いだおカネの額よ)

そして、今作でキーになっている一つのフレーズ、それは「slay」。もともと「殺す」という意味のフレーズですが「死ぬほどキマっててカッコいい!ヤバい!」という意味のスラングです。ここ数年、やたら使われるようになりましたが、私の印象だと、とにかく女の子のルックスに対して使われる最大級の褒め言葉って感じです。女性が女性を「ヤバい!」って形容するときに多く使われるイメージ。なぜなら女性向けのゴシップサイトやファッションサイトでよく見かける表現だから。

ちなみにマイリー・サイラスによる使用例はコチラ。

(昨日のVMAのマイリー、超ヤバかったよね!)

 

ビヨンセは以下のように使っている他、本曲では「slay」を連発しています。

「When he fuck me good I take his ass to Red Lobster, cause I slay(彼が私を思いっきり満足させてくれた後は、レッド・ロブスターに連れて行くの、私って相当ヤバいから)

「I might get your song played on the radio station, cause I slay(あなたの曲、ラジオ局で掛けられるようにしてあげてもよろしくてよ、なぜなら私って相当ヤバいから)」

※アメリカのラジオ界では、かつて「ペイオラ」と言って、ラジオ曲やDJに賄賂を渡して曲をエアプレイしてもらうことが問題になっていました。

そんなわけで、ビヨンセの号令で世界中の女の子が隊列を組んで戦うぞ!というのが、本曲の魅力の一つなわけです。

このMVを撮影したのは、女性ディレクターのメリナ・マトソウカス。同じビヨンセのMVでは、ほかに”Pretty Huts"も彼女の手によるもの。このMVも、自分の美醜に捉われすぎて自己崩壊寸前の状態になるビヨンセが上手く描き出されていますよね。女性ならすごく共感できるんじゃないかしら。

www.youtube.com

余談ですが先述した「彼をモールに連れて行って…」のくだりに関連して、私、ビヨちゃんが愛する男に貢ぐ楽曲が大好きなんです。その真骨頂が、ビヨが夫・ジェイ Zのコスプレをして「あなたの時計も服も、アップグレードしてあげる♡」というコレ。リリックに「あんたのネクタイをパープルレーベルにしてあげるわ!」って箇所があるのですが、それに憧れて当時の彼氏にラルフ・ローレンのパープル・レーベルのアイテムをプレゼントしたことがあります(のちに配偶者となる)。

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そして、本曲はもう一つ、アフリカン・アメリカンの人々らにとっても拠り所なる楽曲なんです。

まず、冒頭でシャウトされるのは「What happened at the NewOrleans? Bitch, I'm back by popular demand (ニューオーリンズで何が起こったのか知ってんのか?ビッチ、ご好評に応えて帰ってきてやったぜ)」というフレーズ。このフレーズ、メッシー・マイアという男性の声なんですね。このメッシーもニューオーリンズ出身。地元そしてソーシャル・メディアで人気のコメディアン&ラッパーでした。そのメッシーなんですが、2010年に彼女のベイビー・シャワー(安産を願うためのお祝い)から帰る途中に銃撃されて命を落としているんですね。まだ犯人は捕まっていないとか。そして、ニューオーリンズといえば、否応なく2005年にニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナによる大災害の事を思い出します。事実、MVの冒頭はは家屋を飲み込むような水の中、半分水没したパトカーに乗ったビヨンセが映し出されます。また、カトリーナといえば、被災した住民の多くがアフリカン・アメリカンやヒスパニックだったことから、地域や政権が抱える人種問題も浮き彫りにしました。カニエ・ウエストも当時、「George Bush doesn’t care about black people(ジョージ・ブッシュは黒人の事なんて気にしちゃいない)」と発言して話題になりましたよね。

なので、最初の「ニューオーリンズで何が起こったのか知ってんのか?」というメッシーのフレーズは、そのまま、カトリーナが襲ったこの町(アフリカン・アメリカン・コミュニティ)は、その後お前ら(白人主導の政権)が放ったらかしにしてるんだろ!」というメッセージとしても受け取れます。

…と言う、強烈なステイトメントでスタートするのが、この”Formation”なんです。その後に続くビヨンセのラインにも、アメリカ南部出身のアフリカン・アメリカンである自身のルーツを強調する箇所がチラホラ。

 

「My daddy Alabama, Momma Louisiana You mix that negro with that Creole make a Texas bamma(パパはアラバマ、ママはルイジアナ出身、そんなニグロをミックスして、クレオールを足したのがテキサス娘の私なの)」

ルイジアナクレオールの関係については調べてみてください。クレオール、いろんな意味がありますが、ここではフランス領だった時代のルイジアナに根付く文化や人種の事。ビヨンセ=Beyoncéという綴り、最後の「e」にアクセントが付きますよね。これはフランス語に由来するもので、彼女がクレオールの血筋だというアイデンティティの一つにもなると思います。ちなみに彼女のパパ、マシューは元マネージャーとして、下積み時代からビヨひいてはデスティニーズ・チャイルドを引っ張ってきた人物(今はみんなにシカトされてる)、ママのティナはスタイリストとしてビヨンセのキャリアを支えたことも有名です。ちなみにビヨンセの出身地、テキサス州ヒューストンはどんなところ?と思ったあなた。ビヨンセ”No Angel"のMVをご覧下さいまし!

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「I like my baby hair, with baby hair and afros(私は自分の娘のヘアスタイルが大好き、アフロヘアなのよ)

→MVにも出てくる愛娘、ブルー・アイビーちゃん。ナチュラルなアフロ・ヘアですよね。

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「I like my negro nose with Jackson Five nostrils(私は自分のニグロっぽい鼻が好きなの、ジャクソン・5の鼻腔よ)

マイケル・ジャクソンじゃなくてジャクソン・5というところに意味がありそうです。ちなみにスーパーボウルのハーフタイムのショウの衣装、マイケルを模したものでしたね!

「I got a hot sauce in my bag, swag(私はバッグの中にホット・ソースを入れてるの、スワッグよ)」

→このライン、ネットで一番バズってるのでは?アメリカ南部、ニューオーリンズのあるルイジアナ州あたりはホット・ソース(そのまんまの意味、辛い調味料)がポピュラーなエリア。タバスコの本社もルイジアナにあるそう。ちなみにビヨンセがTIDALで発表した最新プレイリストの名前は「hot souce」だそう!

でもって、フックでシャウトされる「I like cornbreads and collard greens, bitch」というフレーズ。コーンブレッドとコラードグリーンもまた、ソウルフードの典型的な組み合わせです。

「I just might be a black Bill Gates in the making(私、このままだと黒人版ビル・ゲイツになっちゃうかも)

ビヨンセ、ミシェル・オバマでもなくオプラ・ウィンフリーでもなく、ブラック・ビル・ゲイツを目指していたのですね!でも本当にブラック・ビル・ゲイツになりたいのは夫のジェイなんじゃないかと睨んでいますが…。リル・ウェインもビル・ゲイツになりたがっていることは有名ですね(そういえばウェインもニューオーリンズ出身の人気者)。

また、MVからもたくさんのメッセージを読みとることができます。

教会で歌う人々、マルディグラのパレード、クレオール風のドレス、「The Truth」と書かれた新聞の一面にはキング牧師と「More Than A Dreamer(夢以上のものを成し遂げた)」の文字などなど…。そして、極め付けは機動隊の前で踊る小さな少年でしょう。黒いフードを被った少年。フードといえば、トレイヴォン・マーティンが銃撃された事件を想起させます。そのあと、少年が機動隊の行き手を阻むように両手を広げると、降参のポーズのように両腕を上げる機動隊。これは、ファーガソンでマイケル・ブラウンが銃に撃たれた際に行われたデモ運動<Hands up, don't shoot>を思い出させます。ファレル・ウィリアムズも2015年のグラミー賞のステージで、このジェスチャーを模したパフォーマンスを披露していましたよね。

MV中には殴るように壁に書かれた「Don’t Shooting Us(俺たちを撃つな)」のグラフィティ文字(ちなみにディスティニーズ・チャイルドの2ndアルバムのタイトルは『The Writing's on the Wall』…関係ないけど)。そして、冒頭のメッシー・マイアにも繋がるわけですね。

「Now let's get in formation(さあ、列を組んで)」と高らかに歌うビヨンセ、同胞たちを整列させ、まるで自分たちを抑圧する体制に立ち向かおうと鼓舞しているようです。

そして、この曲、決して明るくない、恵まれているとは言えない状況において「それでも生きていかなきゃ行けない」と歌う文脈は、やはりケンドリック・ラマー”Altright"も想起させます(ケンドリックは「We hate po-po, wanna kill us dead in the street fo sho(俺らは警察を憎んでる、あいつらは俺たちのことなんて路上で死ねばいいと思ってるのさ)」とラップしていましたよね)

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これまでのビヨンセは人種問題に関して明言することがなく、その点を責められることもあったほどでした。むしろ、肌が明るいことも手伝ってか(歌詞の中にも「Yello-Bone」=肌のトーンが明るい黒人というフレーズが)、白人側にいるんじゃないの?と揶揄されることも。そんな彼女が、この楽曲とMVで自身のステイトメントをしっかりと明確にしたというわけですね。なんかビヨンセって、このままいくと現代版アリス・ウォーカーみたいにもなりそう。ニーナ・シモンの方が近い?いずれにせよ、これからのビヨンセはより一層世界を「SLAY」していくに違いなさそうです。

ちなみにこのMV、同じくニューオーリンズを舞台にしたドキュメンタリー映画『"That B.E.A.T."』のシーンを無断使用しているとのことで、別の意味でも騒動になっているみたいです。

続報などあれば、またしたためます。

では、またね。